サンレモ音楽祭2023・優勝経験のある出場者たち

イタリアで最も重要な音楽番組であるサンレモ音楽祭。第73回を迎える今年は、2023年2月7日から11日にかけて、RaiPlayにて世界同時放送を行います。

当日の放送をより楽しんでいただけるよう、イタリア文化会館のブログでは、ジャーナリストの磐佐良雄氏が4つの記事にわたって参加アーティストを紹介します。

優勝経験のある出場者たち

「サンレモ音楽祭」。’60年代に青春時代を過ごした世代以上の日本人にとっては、流行したヒット曲の産地として、その名を知らぬ方はいないとさえ言われています。日本でTV放映までされていたのですから。

しかしその後、日本ではTV放送は打ち切りとなり、毎年発売されていたその年の『サンレモ音楽祭』のレコード群が発売されることも打ち切りとなったので、その後の世代にはまったく知名度のない音楽祭になってしまいました。

しかしこれは先進国の中では日本だけの事象です。イタリア本国ではずっと継続して開催され、規模もどんどん大きくなり、今年73年目を迎えます。その証拠に今もなお、視聴率は例年50%前後を誇るほど、音楽業界にとっても、イタリア市民にとっても大きな関心事であり続けているのは間違いありません。

イタリア音楽史に残る名曲はもちろん、この音楽祭からスターダムにのし上がり、今ではレジェンドとなった歌手たちも枚挙にいとまがありません。そして2021年には、今、世界中のロックシーンの話題を一手に担うマネスキンを輩出しています。

この「サンレモ音楽祭」を日本人に判り易くイメージさせるためにか、「紅白歌合戦のイタリア版」という表現をされる場合がありますが、実は全く“中身”が異なります。

サンレモ音楽祭は会期初日に初めて聴衆が耳にする“新曲”でコンテストに臨むこと。そして会期は5日間にも及び、生放送故、深夜1時~2時まで平気で延長になること。規模も大きく異なるし、歌手たちも緊張感を持った真剣勝負で挑むというところが全く異なります。

今回のサンレモ音楽祭は新人部門が撤廃されたため、ベテラン勢22組+新人6組=計28組という大所帯の出演者となりました(深夜まで延長するの確定!ですね)

【サンレモ音楽祭2023】
会期:2023年2月7日(火)~11日(土)の5日間(日本時間では翌日未明の時間帯)
※日本からもネット上でリアルタイム&後日のオンデマンドで視聴可能。
https://www.raiplay.it/programmi/festivaldisanremo


アンナ・オクサ
Anna Oxa

1978年のサンレモ音楽祭に16歳でデビュー。いきなり総合2位に輝く華々しいデビューを飾り、出場曲「青春(Un’emozione da poco)」も大ヒットを記録。同曲は映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015)でも悪役ジンガロの持ち歌として歌われて21世紀にリバイバルヒットしました。その後、アルバム毎に髪の色や姿かたちを変える七変化で80年代のイタリア音楽界を牽引するディーヴァに成長し、サンレモ音楽祭出場は今回で15回目(!)という、まさにレジェンド。そして1989年・1999年の2回の優勝経験も有しています。前回の出場は2011年でしたので12年ぶり。ちなみに血筋はアルバニア国で、イタリアに帰化して二重国籍を有しています。61歳。
出場曲:Sali (Canto dell’anima)
※人気バンドBaustelle(バウステッレ)のF.BianconiとPooh(プー)の名編曲家F.Zanottiらとアンナ自身が共作した楽曲


ジョルジア
Giorgia

サンレモ1995で優勝し、“イタリアで一番の歌ウマ女性歌手”という形容詞を勝ち取った人物。それ以前の駆け出しの頃は英語で歌うソウル歌手で、この頃来日公演経験もあるので、言わば、サンレモ史上初のソウル歌手ということにもなります。(サンレモ以降の彼女は主にイタリア語で歌うスタイルに転向)。サンレモ音楽祭には2001年までに4回出場し、96年は3位、2001年は2位と優秀な成績を納め、出場曲はいずれも大ヒットを記録しています。今大会へはその2001年以来の、実に22年ぶりの出場となります。ローマ出身・51歳。
出場曲:Parole dette male
※作曲陣にトラックメーカーらが参加しているのでダンス曲か?


マルコ・メンゴーニ
Marco Mengoni

エキセントリックなアーティストMorgan(モルガン)に見出され、2009年のXファクターに出場すると優勝を勝ち取り知名度を上げました。MTVヨーロッパ・ミュージック・アワード2010で、ベスト・ヨーロピアン・アクトを受賞した最初のイタリア人アーティストとなり、2度目のサンレモ出場となる2013年大会で優勝を飾り、その後も数々の国際的な賞レースでイタリア人アーティストとして賞を勝ち取ったり、ノミネートされることが多く、枚挙にいとまがありません。今ではイタリアでは数少ない“若くして大スターとなった人物”のひとりとして一目置かれているシンガーソングライター&ロックテイストを持つヴォーカリストです。今大会へは2013年の優勝以来、3回目の出場となります。ラツィオ州ヴィエテルヴォ近郊ロンチリォーネ出身・34歳
出場曲:Due vite
※もちろんマルコ自身がヒット曲メーカーD.Simonettaらと共作。


パオラ・エ・キァーラ
Paola e Chiara

90年代のイタリア音楽界を賑わせた883(オット・オット・トレ)が生み出した姉妹デュオ。サンレモ1997新人部門で優勝し、一躍人気者に。初期の瑞々しい世界観から次第にダンス音楽路線&セクシー路線に推移し、特に毎夏の“トルメントーネ(夏のヒット曲)”の常連となりました。2013年には惜しまれつつも解散を発表し、以降はそれぞれがソロや女優などで活動していましたが、昨2022年にコンビ復活。サンレモへは2005年以来、5回目の出場となります。ミラノ出身・パオラ(黒髪)48歳、キアラ(金髪)49歳
出場曲:Furore
※姉妹が曲作りに参加し、複数人のトラックメーカーらと共作しているので、お約束のダンス曲か?


ウルティモ
Ultimo

サンレモ2018新人部門優勝を飾って知名度を上げ、翌2019年大会では2位に甘んじたものの、収録アルバムは2019年の年間アルバムチャートで首位に輝き、自身の過去のアルバムを含め全3枚が年間10位以内にランクインするという大ブレイクを果たし、“真の優勝者”と呼ばれました。
坊ちゃん顔なのにタトゥーだらけの身体というミスマッチ。自身の音楽の事を“cantautorap(カンタウトラップ=歌手・作家・ラッパー)”と表現している通り、ラッパーでもあるシンガーソングライターです。

Ultimoは2019年大会が今回同様の新人部門なし大会だったため番狂わせが生じ、新人Mahmood(マムッド)に優勝をさらわれて2位に甘んじたものの、後に「真の優勝者」と言われた。その雪辱を果たせるか?
(/2018年新人部門/直近2019年出場/3回目)ローマ出身・27歳。
出場曲:Alba
※ウルティモの単独作。サンレモらしい路線の曲で来るか?それとも・・・


レオ・ガスマン
Leo Gassmann

サンレモ2020新人部門優勝経験者。その姓が示す通り、イタリアを代表する国際的名優だった故・ヴィットリオ・ガスマン(『にがい米』1949、『戦争と平和』1956)の孫にして、2世俳優の立場に甘んじることなく自らもスター俳優となったアレッサンドロ・ガスマン(『トランスポーター2』2005)の息子。イタリアっぽくない姓の由来はユダヤ系ドイツ人の移民の血筋のため。

レオは音楽の道に進み、7歳でクラシックギターを始め、9歳で名門サンタ・チェチーリア音楽院に入学。 Xファクター2018に参加し5位となって頭角を表しました。サンレモ2020新人部門で優勝を遂げ、一躍イタリア中で知名度を上げ、今大会へはその年以来の2回目の出場。ローマ出身・24歳
出場曲:Terzo cuore
※レオ自身の他、人気バンドPinguini Tattici NucleariのヴォーカルR.Zanottiらとの共作。

(Photo credit: RAI)

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