ちょっぴりイタリア・オペラ〜有名なオペラの内容を知ろう ヴェルディ《ドン・カルロ》#2

第4幕* ロドリーゴのアリア〈私の最期の日が来ました〜おおカルロよ、お聞きください〉
(*5幕版)

Verdi 《Don Carlo》Atto quarto* “Per me giunto… O Carlo ascolta” (Rodrigo)
(*versione in 5 atti)

イタリア語5幕版の台本表紙

2020年1月にこのシリーズで採り上げたのは、同じくオペラ《ドン・カルロ》から、国王フィリッポ2世のアリア〈彼女は私を愛したことがない〉でした。そして今回はカルロ王子の親友であるロドリーゴ(ポーザ侯爵)のアリア〈私の最期の日が来ました〉から、「ロドリーゴの死」としても知られる〈おおカルロよ、お聞きください〉までをお届けします。これは、ヴェルディ・バリトンの代表的なアリアのひとつに数えられます。

この《ドン・カルロ》というオペラのストーリーには、宗教的弾圧が含まれています。この場合は、カトリックによる新教の弾圧のことで、圧政に苦しむフランドルの人々の存在が描きこまれています。

スペインに支配され圧政に苦しむフランドルの新教徒の人々を救うことに命を懸けてきたロドリーゴは、親友のカルロ王子をその思想の中に巻き込んで行きます。カルロは新教徒を弾圧し、処刑することもいとわない国王に対し反抗的な態度を露わにします。それがフィリッポ国王の怒りに触れ、カルロは反逆者として、投獄されてしまいます。

ロドリーゴは、新教徒を救う道は、カルロがカトリック一辺倒のスペインを変えていくことにあると考え、本当の反逆者は王子ではなく自分だと申し出て、国王の配下の者に撃たれ、カルロの目の前で命を落とします。

1884年のミラノ・スカラ座での上演の際の描画

今回採り上げたシーンは、前半が、ロドリーゴが死を覚悟してカルロに別れを告げる場面。後半が銃弾を受けたロドリーゴが息絶えるまでとなります。

Per me giunto è il dì supremo, no, mai più ci rivedrem;

私の人生に最期の日が来ました もうお会いすることはできないでしょう

ci congiunga Iddio nel ciel, Ei che premia i suoi fedel’.

神に忠実であった我々を天でまた合わせてくださるでしょう

Sul tuo ciglio il pianto io miro; lagrimar così perché

あなたの睫毛に涙がみえます 泣く理由などどこにありましょう

No, fa cor, l’estremo spiro lieto è a chi morrà per te.

しっかりしてください あなたのために死ねる者は幸せです

O Carlo, ascolta, la madre t’aspetta a San Giusto doman.

ああカルロ 聞いてください 母上が明日サン・ジュストでお待ちです

tutto ella sa… Ah la terra mi manca…

あの方は全てをご存知です ああ この世が遠ざかっていく 

Carlo mio, a me porgi la man!

親愛なるカルロよ 私の手を握っていてください!

Io morrò, ma lieto in core,

私は死んで行きますが 心は晴れやかです

chè potei cosi serbar alla Spagna un salvatore!

スペインの救世主となる方をお救い出来るのですから!

Ah! di me non ti scordar!

ああ どうか私のことを忘れないでください!

Regnare tu dovevi, ed io morir per te.

あなたは治めるべきことをするのです そして私はあなたのために死にます

Ah! Io morrò, ma lieto in core………ecc.

ああ!私は死んで行きますが 心は晴れやかです etc.

Ah! La terra mi manca… la mano a me…

ああ!この世が遠ざかっていく… 私に手を…

Ah! salva la Fiandra…

ああ!フランドルをお救いください 

Carlo addio, ahime!

カルロよ お別れです ああ…..

(河野典子)

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