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毎年3月25日はダンテの日(Dantedì:「ダンテディ」)として、この偉大な人物にちなんだ各種イベントが執り行われます。ダンテの没後700年を来年に控え、今年のダンテディはより一層の盛り上がりを見せています。
ダンテ・アリギエーリ(1265-1321)は、ルネサンス期の先駆者である政治家・詩人で、現代イタリア語の父ともいわれています。1321年に完成した彼の代表作『神曲』は、イタリア文学の最高傑作であると同時に、世界に二つとない偉大な作品とされ、今日まで読み継がれています。
ところで、ダンテが生まれたのは1265年5月21日から6月21日の間、亡くなったのは1321年の9月13日から14日にかけてといわれています。それではなぜ3月25日がダンテの日として祝われるのでしょうか?
かの『神曲』に描かれる、この偉大な詩人の旅が行われたのは、1300年と推測されています。さらに、作品の中にちりばめられている手がかりを集めると、その日付まで絞り込むことができるのです。
例えば、「地獄篇」第1歌第37行から40行にかけて、ダンテは、一頭の豹が目の前に立ちはだかった際の状況をこう描いています。
時は朝のはじまる暁、
太陽は、神の愛がはじめてあの美しい宇宙を
動かした時にもともにあったあの星座を従えて
昇ろうとしていた。
「神の愛がはじめて(…)宇宙を動かした時」とは、天地創造の時を指します。そして、天地創造がなされた時、季節は春で、太陽は牡羊座とともにあったとされています。よって、ここに言及される「星座」は牡羊座、これは春分の日の朝を描写したものであると推測できるのです。
また、中世ヨーロッパでは、一年の始まりは現在のように1月1日からではなく、キリストの生誕にちなむ12月25日とする場合と、キリストの受胎告知にちなむ3月25日とする場合がありました。ダンテが生きた当時のトスカーナでは、一年の最初の日は3月25日とされていました。
これらをはじめとする多くのヒントをもとに、諸説ありますが、ダンテが「暗い森の中をさまよっている」自分に気づいたのは、1300年3月25日とされています。
「ダンテの日」3月25日とは、彼の誕生日や命日ではなく、現代でも我々を驚嘆させ続ける、あの旅の始まりの日だったのです。
<参考文献>
ダンテ・アリギエリ/原基晶訳『神曲 地獄篇』講談社、2014。
La dante.it “Il viaggio di Dante”