ちょっぴりイタリア・オペラ〜ヴェルディ《ナブコドノゾル》

ヴェルディ《ナブコドノゾル》第3幕よりヘブライの奴隷たちの合唱 「行け、想いよ、黄金の翼に乗って」

Verdi NABUCODONOSOR (NABUCCO) Atto terzo Coro di schiavi Ebrei “Va, pensiero, sull’ali dorate”

1842年初演当時の台本

世界中がコロナウイルスに苦しんでいます。

ご存知のようにイタリアは、大変な苦難の中にあります。

そこで今回は、アリアではなくイタリア人にもっとも愛されているオペラ合唱曲と言っていい《ナブコドノゾル》(ナブッコ)第3幕の「行け、想いよ、黄金の翼に乗って」をご紹介します。

旧約聖書に題材を得たこのオペラの主役、ナブコドノゾルは日本ではネブカドザネル2世(NebuchadozanzzarⅡ)と呼ばれるバビロンの王。彼はエルサレムからヘブライ人たちを捕らえてバビロンに強制的に連行してきた「バビロン捕囚」で知られています。この合唱曲はユーフラテス川の川辺で、ヘブライ人たちが、懐かしい故郷を思って歌うもの。愛国心を歌うものとしてイタリア人に愛されています。

「 行け、想いよ」合唱部分冒頭

イタリアとイタリアの人々が、この苦難を無事に乗り越えてくれるようにとの願いを込めて。

“Va, pensiero, sull’ali dorate;
Va, ti posa sui clivi, sui colli,

行け、想いよ、黄金の翼に乗って行け、
斜面や丘でその翼を休めながら

Ove olezzano tepide e molli
L’aure dolci del suolo natal!

温暖で、とてもいい薫りの
生まれ故郷の優しいそよ風のもとへ

Del Giordano le rive saluta,
Di Sïonne le torri atterrate

ヨルダンの川岸によろしく言っておくれ
壊されたシオンの塔の数々にも

Oh mia patria sì bella e perduta!
Oh membranza sì cara e fatal!

ああ美しく、そして失われた我が祖国よ!
いとおしく、そしてつらい思い出よ!

Arpa d’ôr dei fatidici vati,
Perché muta dal salice pendi?

運命の予言者たちの金の琴よ
なぜ柳の木に掛けられて黙っているのだ

Le memorie nel petto raccendi,
Ci favella del tempo che fu!

我々の記憶再び燃え上がらせ
我々の(幸せな)日々のことを語っておくれ

O simìle di Solima ai fati
Traggi un suono di crudo lamento,

あるいはエルサレムの運命の記憶の
つらい嘆きを奏でておくれ

O t’ispiri il Signore un concento
Che ne infonda al patire virtù……

さもなくば、この苦難に耐える力を与える
主の温かいお言葉を……

(河野典子)

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