オペラの世界3 ~マエストロ ファビオ・ルイージ~

Buongiorno a tutti!

今日は河野典子さんがファビオ・ルイージについて話してくださいます!

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私これまでに指揮者のファビオ・ルイージ(Fabio Luisi)氏をインタヴューさせていただいたことが2回あります。

 

最初は、マエストロがまだドイツを中心に活躍していらした頃のこと。日本の劇場にイタリア・オペラの指揮でいらした時でした。そのときのマエストロは、英国仕立てを思わせるシックな三つ揃いのスーツをお召しでした。

イタリア人アーティストのインタヴューは多くの場合、ひとつ質問を投げかけると先方のお話しは限りなく、あちこちへと広がっていきます。(逆に言えば、こちらの質問の答えだけをいただいて、「さて次の質問ですが」という展開に持っていくのはとても難しいということでもあります。もしもそういった形で相手が興に乗ってお話しされているのを遮ると、大概はご機嫌が悪くなっていきます。)

 

ところが、そのときのマエストロ・ルイージは、こちらの繰り出した質問の内容にのみ、簡潔にお答えになられると、スッと黙ってしまわれます。下手をすると質問にたいして、SiかNoしかおっしゃらない。普段であれば、「それはどういうことですか?」「ほうほう、それでどうなりました?」などと合いの手を入れてお話しを伺っているだけで、時は飛ぶように過ぎてゆき、私はインタヴュー用に決められた時間内に終れるかどうかを心配するのですが、このときばかりは勝手が違いました。静寂に支配されてインタヴュールームの時計の秒針が時を刻む音が響き渡るようでした。

2度目のインタヴューは、マエストロが本拠地をドイツからニューヨークに移されてから、オーケストラの指揮で来日されたときでした。とあるホールの楽屋において、オーケストラのコンサート本番の直前(最終稽古と本番までの間)の20分間がインタヴュー時間として与えられました。前回の経験がありますし、神経質そうなマエストロの、それも本番寸前のインタヴューです。私は珍しく質問を箇条書きにして緊張気味にホールに出向きました。(他のアーティストのインタヴューには気楽に出向くというわけではございません。あしからず。)着いてすぐ、まずは舞台袖の扉の窓から舞台の様子を覗き込みました。

 

そこで私は自分の目を疑いました。そこには派手なピンクの花柄のシャツをお召しのマエストロの姿があったからです。柄の派手さは長袖のハワイのアロハシャツといった趣でした。

 

さて、稽古が終ってマエストロが楽屋に戻っていらっしゃいました。インタヴューを始めてみると、まぁなんとも楽しげにお話しになられること!それは私が心の中で「もしや前回とは双子でまったく性格の違うご兄弟?」とあらぬ疑いを抱いたほどでした。

 

本番寸前ですから、マエストロに本番前に音楽に集中する時間を作っていただかなければとこちらは気が気ではありません。インタヴューを15分を過ぎたあたりから、私は楽屋の時計をチラチラ見上げ始めました。それに気がつかれたマエストロが「大丈夫!あなたが時間の心配する必要なんてありませんよ。本番開始までにはまだ30分以上ある。僕は着替えるのにそんなに時間がかかりませんから。(笑)で、何の話でしたっけ、あ、そうそう、それでね……」と話を続けられたのです。

ほんの数年の間にこれほどまでに印象が変わった方は、マエストロが初めてでした。本来シャイな方のようですから、初対面の人間には緊張されたということもあったのかもしれませんが、ニューヨークというイタリア系の人々も多く住む開放的な土地柄が、元より彼の持っていた(であろう)イタリア人らしい、明るく人懐っこい部分を引き出してくれたように思えてなりませんでした。

 

それでは、また。

 

 

イタリア文化会館

イタリア語コース

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